ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
青い男はすくっと立ち上がって、こちらに向かって歩いてきた。
そして含んだ笑いを見せると、あたしの服を指差した。
「やっぱり似合うね、俺が選んだ服」
「え?」
「隠すのに丁度いいでしょ?」
何を示唆しているのかよく判る。
だって後方に控える橙色のオーラが半端ない。
「やり過ぎないようにって、折角忠告したのにさ、……溺れすぎたね、陽ちゃん」
途端、すっと笑いが引いた。
「俺にとっては想定内だったけれど、やはり君は――」
藍よりも深い青色の瞳が、あたしを通り越して、陽斗に合わせられる。
「身の程知らず、だよね」
細められた眼に浮かぶのは、青色の狂気。
ゾクッ。
あたしに向けられた言葉ではないのに、あたしは恐怖感に震えてしまう。
「弁解の余地、ある?」
「………」
陽斗は答えない。
「じゃあ判るよね?」
蒼生の動きは一瞬だった。
「……ぐっ!!!」
目の前に居たはずの青色は瞬時に消え、
気づけば後方で金色が蹲(うずくま)っている。
「俺は…気分を害されるのが嫌いだ」
そして金色を冷たく見下ろしている青色は、
金色を肩に担ぎ上げドアに向かったんだ。
陽斗は完全に気を失っているようだ。
あの陽斗が、一撃で倒れるなんて。
「なッ!! 待ってよッ!!」
あたしは震える声で蒼生を呼び止める。
「何、芹霞チャン」
少し深呼吸をして言った。
「陽斗を殺すならあたし、
ここで舌噛み切るよ」
本当にあたしが必要であるならば。
それは絶対避けたいことでしょう?
あたし自身が…蒼生の動きを抑える切り札となりえると…、あたしはそう思ったんだ。