ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「あはははははは~」


向けられたのは、胡散臭い笑い。

それはあたしの浅はかな"思い込み"を覆すもので。


あたしという存在は、蒼生という男にとっては、何の効力も持たないことを悟る。


蒼生は、あたしに振り返る。


「別に、殺すつもりはないよ?」

「じゃあ何するのよッ!!!」


飛び掛りそうな勢いのあたしを、煌が腕を掴んで止めた。


「大丈夫。陽ちゃんの体は"特殊"だから」


あたしは訝った。


「怖い顔は似合わないよ? ああ…判った、判った。じゃあこっちの用が済んだら、ちゃんと動く身体で芹霞ちゃんに返すから」


「傷つけない?」


「んー、多分大丈夫だよ。治るの早いから。ほら、この傷だってもう治ってるでしょ」


蒼生は、以前煌が切り付けた腕の傷を促した。

裂かれた服地はそのままで。


血糊も服地に染み込んでいるものの…




――傷がなかった。




「!!!」



煌が何かを悟ったようだ。

驚愕に目を見開いている。



「ねえ、"緋影"って知ってる?」



愉快そうな蒼生の声。



「緋影……確か櫂が……」



――死に耐性を持った、死ににくい一族だ。




「あはははは~」


笑い声が響く。



「不死ではないよ。肉体の組織再生速度が速いだけ。だけど、完全じゃない。完全じゃないから、実験で失った欠損部分もある」


『実験』に力を込め、酷薄な笑みを浮かべるその顔は。


「もう陽ちゃんのデータは採取済みだからね、間違って"肉体が壊れちゃった~"なんてならないから」


ぞっとする程、残忍な悪魔染みていて。



「ちゃんと君に返すよ。

それでまた無謀な脱出、試みてよ」


「提案を拒否したら?」


「そうだね、じゃあ……今此処で、彼の頭を吹き飛ばそうか」



向けるその情は…"愉悦"。



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