ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「………?」
妙な心持ちで、横から芹霞の顔を見れば、能面のような顔をしたまま…不自然に固まっていた。
感情が何もない、虚無の顔。
わざとじゃねえ。
これは――
――煌、1つ覚えておけ。芹霞は…
やばい。
すぐ俺はそう思った。
芹霞はたまにこんなことがある。
玲曰く――
闇にあてられるのだと。
人の中の闇に惑ってしまうのだと。
玲も櫂も俺には補足してくれねえ。
ただ言われてる。
そういう時は――
「芹霞、起きろッ!!!」
出来るだけ早く芹霞を現実に引き戻すこと。
そしてその起因たる対象を速やかに退けること。
その頬をぱしぱし叩くと、意外に早く芹霞の心が戻ってきた。
「……ふえ? 煌?」
挙動不審にも思える目の動き。
やはり。
御階堂は、芹霞には鬼門だ。
――出るか。
ここには氷皇は居ない。
御階堂だけが相手なら、逃げ切れる。
俺の決意が判ったのか、芹霞も頷いた。
「陽斗もね」
俺は頷き、
「芹霞、3だ」
「……判った」
3、2、1……
「GO!!!」
俺は、芹霞の腕を掴んで駆けた。