ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
ざわめく屋敷の気配。
その数、尋常じゃない。
この屋敷に、これだけの数が待機していたのか。
確かに――
あの応接間での監視視線は半端なかった。
だから俺も、直ぐ逃げ出すよりも様子を窺っていたんだ。
大体の敵のレベルは、空気から伝わる気で把握している。
抜けきれねえわけでもねえ。
だが交戦途中で氷皇が出現したら厄介だ。
芹霞もいる。
ひとまず、落ち着くのを待つか。
俺は廊下の壁に、古くさい木の扉があるのに気づき、そのドアを開けた。
――ギイッッ。
軋んだ音をたてて扉は開く。
物置…でもなさそうだ。
下に向かう階段が前方にある。
「入ろう」
閉めたドアの向こう側では、
多数の人間が走る音が聞こえてくる。
途切れる気配はない。
俺は気配を消せるが、芹霞は素人だ。
それならこの場所に居る方がリスクを負うかも知れねえ。
「降りるぞ」
階下に何があるのかは判らないが、
もしかして抜け道があるかも知れない。
そんな期待を胸に抱いて、薄闇の階段を下りていく。
だんだんと明りが見える。
同時に――
「何かむあむあして熱くない?」
汗が流れる程の熱量。
そして押し寄せるような――
「電磁波?」
――玲だ。
玲のあの部屋と感覚が似ているんだ。
何だ?
何があるんだ?