ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
嘘臭い青い男と、不気味な笑み湛える男が、ゆっくりと歩み寄ってくる。
あたしは思わず一歩退いた。
「芹霞には触れさせねえ」
橙色があたしの前に立つ。
「んー、君に俺の相手、出来るのかなあ?」
蒼生は歪んだ笑いを浮かべた。
煌が握った拳に力を入れたのが判る。
カタカタカタカタカタ…。
緊迫した空気の中、由香ちゃんの叩くキーボードの音だけが鳴り響く。
「僕の元に来い
――神崎」
不意に先輩の声がした。
「え?」
「お前が僕から逃げようとしなければ、氷皇を退かせてやる。その紫堂の犬も道化師も、生きて戻してやるさ」
一歩、先輩があたしに近づく。
煌が舌打ちをした。
「うるせえんだよ、お前」
しかしそれを無視して先輩はあたしに語る。
「僕が欲しいのはお前だけだ。
だから約束してやる。
もし拒めば――
2人共…命ないぞ?」
呼応するように薄く笑う氷皇は、判断をあたしに委ねている。
判っている。
だから――