ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
 



「2人が一緒じゃなきゃ嫌」


あたしは突っぱねたんだ。



あたしだって馬鹿じゃない。

離れていいことなんて絶対にありえないと思うし、離れたいとも思わないから。


「最初はそれでもいいかと思ったがな、今は許せない。

――その犬とじゃれるお前が悪い」


「は?」


やはりあたしは先輩が理解出来ない。



「どうしてもあたしは、此処に残らないといけないの?」


「……そうだ」


「無理」


「……」


「煌とあたしは一蓮托生だから」


そう言うと、煌が緩んだ顔で一瞬だけあたしを見た。


「そういうこと!!! 判ったか!!!」


そう、人差し指を先輩に突きつけた。


何だろう。

凄み利かせて勇ましい姿の処悪いけれど、お尻から出ている尻尾がぶんぶん振られている気がするんだよな…。


「さあて、マスター。俺はどうすればいいですかー、指示を下さいー」


馬鹿にしたような蒼生の声。



「神崎以外、好きにしろ」

「了解」


笑うと同時――


煌の身体がくの字に折れた。


「ぐはっ……」


蒼生の膝が、煌の鳩尾を急襲していたんだ。


ガスッ!!


更にもう一発。

抉るような鈍い音が響く。


煌の口から血が出た。



「……煌ッ!!!」


嘲り笑う蒼生。

崩れ落ちるように姿勢を落とした煌は――


「!!!」


拳を床に打ち付けた。


びりびりと空気が震え、そして波打つ。

煌の拳を中心にして、床に亀裂が走る。


蒼生は咄嗟に煌から離れ、先輩の前に立つと、右手の人差し指で宙に何かを描いた。

そして掌を突き出すと、煌が放つ…衝撃波のようなものを押しのけた。



煌は叫ぶ。


「芹霞、来いッ!!」


差し伸べられた手にあたしは駆ける。



「神崎ッ!!」


先輩など無視して。

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