ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
煌があたしの腕を掴んだ時。
蒼生の足が動いて…空気がすぱっと裂けた。
鎌鼬(かまいたち)、というものだろう。
煌が咄嗟に、あたしを片手に抱きかかえたまま、身を捻ってそれを避ける。
「うっぎゃあああ、
何てことしてくれるの、氷皇ッッッ!!!」
由香ちゃんが叫んでいる。
「別にいいでしょ、そんなもの。どうせアレのカウントダウンは止まらないんだしさ」
そして蒼生はふっと消えた。
「!!!?」
と思ったらあたしの真横に居て、
「ふふふ。か~わいい」
余裕な顔をしたまま、指であたしの頬を撫でた。
瞬間移動だ、この男。
煌が歯軋りをして、蒼生の喉元めがけて肘を繰り出すが、蒼生はひょいひょいとそれをかわす。
あたしといえば、彼らのその動きによる突風のせいでめくれるスカートを必死に抑えていて。
「あ!!!」
そして煌が僅かに、あたしから離れていたことに気づいた時には、
「捕まえた」
あたしは、先輩の腕の中に居たんだ。
氷皇よりも力は劣ると…侮りすぎた。
比較対象が凄すぎただけで、彼自身…特進科でも名の知れた、運動神経を持つことを、今更のように思い出して。
本当に、一瞬になされたことだったんだ。