ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~





「……神崎……ぃ」



由香ちゃんの弱々しい声。


「ボク……間違っていたのかな?」


蒼生が足で、仰向けに倒れた彼女の鳩尾に力を込めたらしい。


ぐはっという声が聞こえた。


悲鳴を上げて近寄ろうとしたあたしに、由香ちゃんは、


「来るな、来ないでッッッ!!!

早く、逃げろッッ!!

……ぐはッ」


あたしは悲鳴を上げた。



「……陽タンは……離れだから。

助けてあげてよ……1人にしないで。ボクのように手遅れになる前に……」


息も切れ切れに由香ちゃんはそう言うと、意識を沈めた。


女だからとて容赦ない蒼生。


「気分が悪い」


更に由香ちゃんの身体を踏みつぶしたんだ。


あたしは目を瞑る。


――…陽タンは……離れだから。


あたしは由香ちゃんの覚悟を感じた。


――ボクのように手遅れになる前に…。


させないよ、手遅れなんて。

間違いが判ったのなら、そこから再開始できる。


やり直しが出来るのは、ゲームの中だけのことじゃない。


本当に悔いて、本当にやり直しを望むのなら。


必ず、出来るはずなんだ。


あたし達は、未知数の…人間なのだから。


折角、由香ちゃんの意思で、閉鎖的世界から抜け出ようとしているのなら。

あたしは、由香ちゃんの思いを、覚悟を汲み取り、繋げないといけないんだ。


未来へと。

希望へと。



手を伸ばして助けたい。

だけどそれでは駄目な気がする。


――助けてあげてよ……1人にしないで。


恐らくそれが、彼女なりの贖罪。

そして罪の起因は其処にある。


寂しかったんだね。


今まで判って上げられなくてごめんね。

判ろうとしないでごめんね。


――ボク……間違っていたのかな?


そんなあたしを信じて、助けてくれてありがとう。



あたしは――


由香ちゃんから託された意思を、受け継ぐよ。


だからまた、会おうね。




< 388 / 974 >

この作品をシェア

pagetop