ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「……神崎……ぃ」
由香ちゃんの弱々しい声。
「ボク……間違っていたのかな?」
蒼生が足で、仰向けに倒れた彼女の鳩尾に力を込めたらしい。
ぐはっという声が聞こえた。
悲鳴を上げて近寄ろうとしたあたしに、由香ちゃんは、
「来るな、来ないでッッッ!!!
早く、逃げろッッ!!
……ぐはッ」
あたしは悲鳴を上げた。
「……陽タンは……離れだから。
助けてあげてよ……1人にしないで。ボクのように手遅れになる前に……」
息も切れ切れに由香ちゃんはそう言うと、意識を沈めた。
女だからとて容赦ない蒼生。
「気分が悪い」
更に由香ちゃんの身体を踏みつぶしたんだ。
あたしは目を瞑る。
――…陽タンは……離れだから。
あたしは由香ちゃんの覚悟を感じた。
――ボクのように手遅れになる前に…。
させないよ、手遅れなんて。
間違いが判ったのなら、そこから再開始できる。
やり直しが出来るのは、ゲームの中だけのことじゃない。
本当に悔いて、本当にやり直しを望むのなら。
必ず、出来るはずなんだ。
あたし達は、未知数の…人間なのだから。
折角、由香ちゃんの意思で、閉鎖的世界から抜け出ようとしているのなら。
あたしは、由香ちゃんの思いを、覚悟を汲み取り、繋げないといけないんだ。
未来へと。
希望へと。
手を伸ばして助けたい。
だけどそれでは駄目な気がする。
――助けてあげてよ……1人にしないで。
恐らくそれが、彼女なりの贖罪。
そして罪の起因は其処にある。
寂しかったんだね。
今まで判って上げられなくてごめんね。
判ろうとしないでごめんね。
――ボク……間違っていたのかな?
そんなあたしを信じて、助けてくれてありがとう。
あたしは――
由香ちゃんから託された意思を、受け継ぐよ。
だからまた、会おうね。