ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
目の前では、先輩が頭を両手で抑えて目を伏せ、片膝をついている。
軽い脳震盪でもおこしているのか。
煌を見遣ると、
「………」
口許を拭いながら頷いた。
今なら蒼生はあたしの側。
そう、あたしが蒼生を振り切ればいいだけだ。
「煌、両手を組んでッッ!!」
「ああ!?」
煌が慌てて両手を組む。
蒼生がこちらを見る。
先輩がゆっくり顔を上げる。
そしてあたしは助走をつけて走り――
――ダンッ!!
煌の手を踏み台に、更に高く宙に舞った。
瞬時に反応した蒼生があたしを捕まえようと高く飛んだが、
「……ちッ!!」
その手はあたしの足を掠めただけで。
「ナイスッッ!!」
向こう側に移動していた煌が、片手であたしを受け止め、そのままあたし達は部屋から走り出た。