ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


目の前では、先輩が頭を両手で抑えて目を伏せ、片膝をついている。


軽い脳震盪でもおこしているのか。



煌を見遣ると、


「………」


口許を拭いながら頷いた。



今なら蒼生はあたしの側。


そう、あたしが蒼生を振り切ればいいだけだ。



「煌、両手を組んでッッ!!」

「ああ!?」


煌が慌てて両手を組む。

蒼生がこちらを見る。


先輩がゆっくり顔を上げる。



そしてあたしは助走をつけて走り――


――ダンッ!!


煌の手を踏み台に、更に高く宙に舞った。


瞬時に反応した蒼生があたしを捕まえようと高く飛んだが、



「……ちッ!!」


その手はあたしの足を掠めただけで。


「ナイスッッ!!」


向こう側に移動していた煌が、片手であたしを受け止め、そのままあたし達は部屋から走り出た。



< 389 / 974 >

この作品をシェア

pagetop