ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「櫂だ、櫂だッッッ!!!」
破顔して、両手を広げて俺の胸に飛び込んでくる芹霞。
突然すぎる再会に、俺はただ吃驚して。
これは夢?
これは願望?
だけど俺の胸の中にいる芹霞は、温かくて。
芹霞だ。
俺の芹霞だ!!!
「芹霞ッッ!!」
抱きしめた芹霞の髪に顔を埋め、不覚にも俺は泣いてしまいそうになって。
だけど。
「櫂に会えた。会え……ぐすっ。
うわあああああん!!!」
先に芹霞に、派手に泣かれてしまう。
「良かった、会えたああああ!!!」
伝わってくる、悦びと感動。
それだけで俺から…笑みが零れる。
「……櫂、ここは俺が引き受けるから、芹霞連れて行け。
ここからはお前にバトンタッチだ」
煌が苦笑しながら俺を見た。
少しばかり翳った顔。
ぶらりとした腕。
「……刀は握れるか?」
「あ? まあ利き腕は無事だがよ、偃月刀置いてきちまって……おッ!!?」
俺は、"それ"を親指で弾いた。
弧を描き、"それ"は煌の手に収まる。
「俺のピアス!?」
煌が驚いた声を発した。
「緋狭さんからの土産だ。ついでにいえば、緋狭さんも来ている……というか、ここまで俺達を連れてきたのは彼女だ。しかも紫堂本家からベンツ盗んできて、信号無視と限界速度で、パトカー振り切って爆走した。それはそれは優雅な一時だったよ」
「「はあ!?」」
俺の苦笑に、煌と芹霞は同時に声を上げた。
驚いている芹霞から、涙は引いたようだ。
芹霞には――
緋狭さんが、氷皇と並ぶ…いやそれ以上の強さを誇る紅皇であったということは伝えていない。
「なんで人様の実家を巻き込んでそんなこと…あの馬鹿姉めッ!!」
だから、そう…純粋に疑問に思っているのだろう。