ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


煌は太陽石を受け取ると、それを偃月刀に顕現させた。


「武器っていうのは嫌いなんだけどよ、だけどそんなことも言ってられねえしな。大量を捌くには、片腕だけではちと辛えし」


そして――


「じゃあまたあとでな」


いつの間にやら、間合いを詰めていた敵陣に突っ込んでいった。


鮮やかな橙色は獣の如く。

その速度は凄まじい。


自信によって左右される、未知数の戦闘力。


見飽きることのない――

紅皇の秘蔵っ子。



「煌…大丈夫かな…」

「あいつなら大丈夫だ。そんなやわな男じゃない。煌が時間を稼いでくれている間に、行くぞ」


芹霞は少し不安げな顔をして、煌を見つめていたけれど、


「櫂が言うなら…大丈夫か」


そうふわりと微笑んだ。


芹霞の手を握り、俺達は無言で瓦礫の上を歩く。


言いたいことは沢山ある。


例えばどうして道化師を名前で呼んだのか。

例えばどうして氷皇さえも名前で呼ぶのか。


今こだわるポイントではないと承知しているけれど、それでもそんなことしか思い浮かばなくて。


…………。



「……櫂、怒ってる?」


「何故?」


「喋らないし、凄い顰(しか)めっ面」


「………」


顔に出ていたのか。



「……ごめんね?」


「………」


「本当にごめんなさい。勝手なことばかりして。勝手に出て行って…此処まで櫂をこさせてしまった…」


違う。

そんなことはどうでもいい。


俺は芹霞を抱き寄せる。


落ち着くと同時に心乱されるこの薫り。


「……芹霞……」


熱に浮かされたように、その名を呼ぶ。


「俺の元に帰れば――

どうでもいい」


俺は微笑んだ。

< 405 / 974 >

この作品をシェア

pagetop