ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
煌は太陽石を受け取ると、それを偃月刀に顕現させた。
「武器っていうのは嫌いなんだけどよ、だけどそんなことも言ってられねえしな。大量を捌くには、片腕だけではちと辛えし」
そして――
「じゃあまたあとでな」
いつの間にやら、間合いを詰めていた敵陣に突っ込んでいった。
鮮やかな橙色は獣の如く。
その速度は凄まじい。
自信によって左右される、未知数の戦闘力。
見飽きることのない――
紅皇の秘蔵っ子。
「煌…大丈夫かな…」
「あいつなら大丈夫だ。そんなやわな男じゃない。煌が時間を稼いでくれている間に、行くぞ」
芹霞は少し不安げな顔をして、煌を見つめていたけれど、
「櫂が言うなら…大丈夫か」
そうふわりと微笑んだ。
芹霞の手を握り、俺達は無言で瓦礫の上を歩く。
言いたいことは沢山ある。
例えばどうして道化師を名前で呼んだのか。
例えばどうして氷皇さえも名前で呼ぶのか。
今こだわるポイントではないと承知しているけれど、それでもそんなことしか思い浮かばなくて。
…………。
「……櫂、怒ってる?」
「何故?」
「喋らないし、凄い顰(しか)めっ面」
「………」
顔に出ていたのか。
「……ごめんね?」
「………」
「本当にごめんなさい。勝手なことばかりして。勝手に出て行って…此処まで櫂をこさせてしまった…」
違う。
そんなことはどうでもいい。
俺は芹霞を抱き寄せる。
落ち着くと同時に心乱されるこの薫り。
「……芹霞……」
熱に浮かされたように、その名を呼ぶ。
「俺の元に帰れば――
どうでもいい」
俺は微笑んだ。