ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



芹霞が傍に居るということだけで。

感動で胸一杯になってしまう俺は、なんて女々しいんだろう。


芹霞が俺の傍に居ないということだけで。

嫉妬に気が狂いそうになる俺は、なんて子供なんだろう。


本当に死ぬほど会いたかったから。

俺から…離したくなかったから。


「俺の傍にいるならどうでもいい」


芹霞がぎゅっと俺にしがみつく。


俺はそんな芹霞を囲い込むように、強く抱く。


芹霞の吐息が肌に溶けそうで。

触れた部分が甘く痺れていくようで。


思わず…息が乱れていく。


俺の…俺の芹霞。



芹霞が俺の胸元で囁いた。



「ありがとう、櫂。

会いたかったよ、凄く」



どくん、と心臓が震えた。



「凄く会いたかった。

また会えて――ホント嬉しい」



少しだけ顔を赤らめて。



「昔と真逆だよね」



――芹霞ちゃあああん!!



「あたし結構、櫂依存症だよね。

違うか、櫂欠乏症なのかな?」


はにかむような上目遣いでじっと見つめられて、


「んー、櫂を充電しちゃお。

ぎゅう~。えへへへ」



無防備に、更に柔らかな体を押し付けてきた。


それは…昔から変わらぬ仕草。



――櫂、ぎゅうしよう? ぎゅう~。えへへへ。



…………。


何で…昔に還る…?



――昔と真逆だよね。


お前、そう言ったばかりだろう?



「ぎゅう~ぎゅう~、もっとぎゅう~♪

搾りたてのミルクはおいしい~

ミルク最高、お~いえい♪」



…………。




< 406 / 974 >

この作品をシェア

pagetop