ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



びゅん!!!



今まで俺達が立っていた処に、不自然な突風が吹いた。


頭上には、突如突き出された黒服の男の拳。


中段の位置で空を切っている。


俺は咄嗟に床につけた両手を軸に、逆立ちのように勢いよく足を持ち上げ、素早く足で男の身体を横の壁に蹴り飛ばす。


俺が体勢を立て直す寸前、見計らったかのように左右から同時に2組の手刀が交差する。


かなりの速度だ。


俺は僅かに早かった左の男の手首を捕まえ、その勢いを利用して身体を後方に反らすと、右の男の喉元に右肘を入れた。


男が崩れ落ちる音。


左の男が俺が掴んだ手を振り解こうと、捕まれたままその手をねじ曲げながら、膝を俺の鳩尾に入れてくる。


その膝を右下碗で弾いた瞬間、掴んだ手は外され、男は口許で嫌な笑みを浮かべながら、ボクシングのような動きで重い拳を繰り出す。


それをすべてかわしながら、俺は瞬時に姿勢を低くして一歩足を踏み出すと、その腹に手刀を入れた。


仰け反った男の足を更に払い、床に落ちた男の鳩尾に、真上から拳を落とした。


「!!!?」


気配を感じ前方を見据えれば、銃を構えた男が居る。



銃口の先は――

芹霞だった。



カチャ。


安全装置が外された音。

引き金にかかった指が、ゆっくりと動く。



間に合わない!!!



だから俺は――



「させないッッッ!!!」



右手を挙げたんだ。

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