ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
瞬時に――風が集う。
それは薄緑色の光を放ちながら、俺の手に螺旋状に絡みつき…俺の髪を揺らした。
引かれた引き金。
「きゃああああ!!!」
銃音と悲鳴。
そして――
俺の腕が纏った緑の光は、渦を巻いた風となる。
轟音を響かせながら芹霞に向かうと、彼女をすっぽりと覆う緑色の防御(シールド)を象った。
カラカラン…。
銃弾が床に零れ落ちる。
そして俺は間髪入れずに、その右手を…驚いて固まる射手に向けた。
左手をその手首に添えながら、俺を取り巻く圧縮された空気の解放を想起する。
行け。
ゴオオオオ。
掌から放たれた薄緑色の風は、1つの弾丸のようにうねりながら対象物に向かう。
その勢いに俺自身、肌がびりびりする。
左手に尚も力を込めて、震える右手を支えながら…その手を真上に押し上げた。
自分の手でありながら、そうだと思えないくらいの重い感触。
俺の手の動きに合わせ、屋根も壁も射手の男も、皆一緒くたになりながら空高く舞い――
そして俺が手から力を抜くの同時に真下に墜落した。
思った以上の仲間を引き連れて、目の前に堕ちた人型のそれは、四肢があらぬ方向にねじ曲がり、既に戦闘力は失われていた。
「ふ……ぅっ」
俺は深呼吸をして芹霞に振り向いた。
芹霞は俺に押し倒された姿のまま、仰向けになって、俺を惑わせるその魅惑的な瞳をこれ以上ないというほど見開いていて――
「………」
俺は…
手を差し伸べることを躊躇した。
確かに、いずれ露見するとは思っていたけれど。
そんな眼差しは、正直辛くて。
芹霞にとって俺は――
あくまで仲の良い普通の幼馴染み。
こんな化け物じみた力を持つ、"紫堂の血"を引く俺は…芹霞にふさわしくない気がして。
「………っ」
ぐっと堪えて唇を噛みしめた時、
「凄い」
と、芹霞が呟いた。