ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「な、何もないよー? やだなー蒼生ちゃん、意味ありげな冗談きっつー。あははははは~」
哀しいくらいの空笑いが響き渡る。
「俺が冗談言うわけないじゃない。大体冗談だというなら、どんな冗談なのさー、あははははは~」
本当に楽しげな嘘笑いも響き渡る。
「だって、あるわけないじゃん、首にキスマークなん「キスマーク……?」
「!!!!」
「うっわー、芹霞チャン自爆ー。あははははは~」
身体を仰け反らせた笑い声が、俺の心を更に煽って。
「……芹霞」
芹霞の顔は恐怖に引きつっている。
そんなに攻撃的な顔つきをしているのか。
もしも芹霞が否定するのなら。
直前までの会話は全て忘れようと思った。
全ては白昼夢だと。
全ては俺の不安から来る妄想なのだと。
早く否定しろ。
しかし――
俺に怯んだ芹霞は何も言わない。