ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「こ、これは……
ただ櫂の嫌がらせだって……。
こ、これ以上は何もないの、本当っ!!!」
これが俺への嫌がらせだというのなら、此程の嫌がらせもない。
笑って済ませられる程の余裕は、瞬時に奪われて。
――ぎゃははははは。
くらり。
――彼もいい男だからねえ、惚れちゃった?
眩暈まで起きる、衝撃。
「あははは。たかがキスマーク如きに気高き獅子がそこまで崩れるなんてねー。放置プレイに余裕ぶっていたツケだね。
そんなに大事なら檻に閉じ込めるか、力ずくで自分のものにしておくべきなんだよ?」
そんなこと、判ってる!!!
芹霞に付いた赤い痕跡を、芹霞の白肌の蹂躙を、『たかが』と見過ごせるほど俺は大人じゃない。
それ以上ないのは判ったけれど。
それ以上あっては気が狂うけれど。
だけど一番問題なのは、
――彼もいい男だからねえ、惚れちゃった?