ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
僕だって芹霞に早く助けたいのに。
櫂はよくて何故僕はいけない?
そう思ってはいけないと、櫂と自分を比較してはいけないと、いつも言い聞かせているのに、その時の僕は上手く自分が制御出来ずに。
「貴女に命じられる謂(い)われはありません。
貴女はもう、僕の教育係を退いた」
どこまでも挑発的に。
櫂が眉間の皺を寄せて僕を見ていた。
「れ、玲様……」
桜が僕の服の裾を引く。
それでも僕は引く気はなかった。
「確かに僕は弱いかも知れません。だけど……」
僕は芹霞を助けたい。
そう思うことは、自由だろう?
「玲」
僕の声を上書きするように、緋狭さんが僕の名を呼び…ゆっくりと一歩近づいた。
叩き…のめされるのだろうか。
思わず身構えた。
だけど緋狭さんは――
「!?」
僕の頭をくしゃりと撫でたんだ。
「え?」
嬉しそうに、艶然と笑っていた。
意味が判らず首を傾げた僕に、緋狭さんは言った。
「玲、守護石は持っているか」
突然何を言い出すのだろう。
「月長石(ムーンストーン)ですか?」
僕はズボンのポケットから不透明に輝く白い石を取り出した。