ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


僕はアクセサリーという虚飾はあまり好きではない。


だから煌のようなピアスにも、桜のようなマスコットにもするつもりはなかったから、風情はないと思うけれど、いつもポケットに裸石で入れていた。


僕には紫堂の力がある。


別に武器に顕現する必要もないけれど、僕の記憶より遙か昔、生まれたと同時に僕の中の力を分配したというこの月長石は、いわば僕の分身。

常に持ち歩かないと落ち着かないけれど、たまたま石を磨いた後、ポケットに入れ忘れてしまったのが…弥生ちゃん宅を訪問した時だ。


特別にこの石の力を引き出してどうこうする気もなく、引き出し方すら判らない。


恐らく櫂も同じだろう。

石の扱い方については、桜や煌には敵わない。


緋狭さんは僕の石を見ると満足そうに頷き、


「ここのコンピュータの電波をこれで吸い取り、自在に操るがよい。やり方は私が教える。お前なら、コツさえ掴めば難なくやりのけるだろう」


そう言った。


「は?」

「櫂も桜も、同時に回復できる結界は張れない。あくまで防御のみの一時凌ぎのものだ」


「……玲が家にかけている結界のことを言っていますか?」


櫂が静かに聞いた。


「そうだ。あの結界をここで作るには、かなりの電磁波とプログラム構築が必要だろう。常駐必須な結界ではなく、移動型の結界を早く作れ。簡易で良い」


「……確かにあれは相当の電磁波を必要としますが……それを今此処で作らないといけないことがあるんですか?」


僕は思わず眉を顰めて緋狭さんに聞いた。



「展開によっては」



その顔は曇っていた。


「しかし作るとしても、家程のコンピュータ……電磁波を揃えるとなれば……」


「必要ない。ここに在る」


彼女はにやりと笑った。


「玲、お前が手こずったメインサーバ、何処に在ると思う?」


「!!!」


僕は瞠目する。

櫂も桜も同じような反応を返した。


「此処……御階堂の分家に、ですか!?」


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