ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
そんな中――
視界に入ったのは…赤色。
芹霞の首筋の赤い痕。
それが何か判らない程、僕は子供じゃない。
問題は、何かではなく"誰"か。
僕以外にこうして芹霞を独占した男が居る。
芹霞の肌に唇を寄せた男がいる。
「………っ!!」
叫び出したいくらいの悔しさが駆け上る。
いまだ僕が遭遇したことがなかった感情。
どろどろとした…
醜く激しい――
これは――嫉妬?
僕は。
今まで、全てを諦めることを常としていた。
執着とは無縁で、ただ流され生きてきたはずなのに。
その僕が。
見過ごせない感情がある。
膨れあがる感情を消せなくて。
行き場を無くした"激情"が、僕の中で暴れ回る。
ああ――…
芹霞は…誰の名前を呼んだのだろう。
苦しい。
苦しいよ。
僕は…こんな想っているのに。
蹂躙したい、と思った。
どす黒い…"男"の感情。
もし今ここで、芹霞を自分のものにすれば…芹霞は僕の名だけを呼んでくれるだろうか。
僕だけの為に啼いてくれるだろうか。
僕だけの名前を…呼び続け、
僕だけを求めてくれるだろうか。
他の…男の名前ではなく、
僕だけを…。