ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
出来るだけ、心配させまいと僕は笑顔を作る。
「道化師と由香ちゃんは助け出したから。あのコンピュータはもう、ゲームを制御出来ない」
「血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)は?」
「それが課題。今僕のメインコンピュータに擬似世界を構築して制御している。だけど僕は完全にアレを解析しているわけじゃないからね。由香ちゃんにも協力してもらおうと思う」
「……陽斗は無事だった?」
陽斗。
芹霞が呼び捨てに始めた、男の名前。
心に刺さった棘が、深く入り込んだ気がした。
「うん、無事だったよ」
笑え。
笑え。
何も悟られるな。
芹霞はほっとした顔で笑った。
「そうか。"再生"出来る緋影の血って凄いよね。
ねえ、玲くん、
煌も――なの?」
真剣な黒い瞳が僕に向く。
「……それ、誰に?」
「本人」
煌が、再生できる身体、というのを芹霞に打ち明けていたのは少し驚いた。
あいつは自分の過去を芹霞に知られるのを極端に嫌っていたから。
そしてそんなあいつも、決定的な記憶を1つ、無くしている。
――8年前。
何故紅皇が、煌を神崎家に連れたのか。
彼女が煌の記憶を消した。
全てが連鎖的に繋がる8年前。
これ以上は、芹霞に触れさせたくないのは、僕も同じこと。
――坊、腹括れよ。