ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
 
 




視線が深く絡み合う。




それは長い間のようにも、僅かな間のようにもどちらにも思えた。





無声音で時が止まった世界。






それを崩したのは――





櫂だ。






「物欲しげに俺を見るな。

そんな――欲情した目で」




ヨクジョウ――




……って何ですか?





浴場?



顔が赤過ぎて、湯当たりしたみたいだと言っているんだろうか。

確かにのぼせた気分ではあるけれど。


変な表現方法だ。


違う意味があるのだろうか。



よく判らない。


だから首を傾げて櫂を見遣り、言葉の説明を待つ。



「………」


………。




「………」


………。



「………」


………。



説明はないらしい。


やがて。


困惑と悲哀を織り交ぜたような複雑な表情をした櫂は、苦しそうに顔を歪めて一瞬唇をかみ締めると、そのままベッドのマットの空きスペースに額をぶつけた。


何だ、一体どうした?






 
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