ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「櫂様、もう11時を過ぎてしまいましたが……」
会話が途切れた処を見計らい、桜が声をかけてきた。
「櫂。細かい話は後にしよう。正装と指定がある以上、一度本家戻って支度しないといけない。由香ちゃんに頼みたいこともあるし」
俺は陽斗を見た。
「芹霞を頼む」
「……お前さ」
「何だ?」
「判っていて、行くのか?」
俺の意思を確かめるような、強い瞳。
"罠だと判っていて"
そんなことは、十も承知だ。
悪い予感は充分感じている。
「売られた喧嘩は買うまでさ」
罠の正体が見えなくとも。
それでなくとも、元老院の命は絶対的なのだから。
回避できないのなら、進むまで。