ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「お前…何が起きようとしてるか、知らないだろうがよ」
多分――
陽斗は知っているのだろう。
これから何が起きるのか。
「陽タン。ボク、頑張ってみるよ」
突然遠坂が硬い表情で言った。
「メインサーバが駄目になった以上、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の制御は、師匠のスーパーコンピュータしか望みを託せない。まさか、自分が作ったものを壊すことになるとは思っていなかったけれど」
「由香ちゃん……何が起きるの?」
玲の声。
「師匠。ボクのメインサーバが壊れたからといって、あのゲームが、呪詛が終わるわけではないんだ」
「え?」
「むしろ壊されると見込んでたんだ、氷皇は。ボクはそんなことはありえないと高を括っていたんだけれどね」
俺は目を細める。
「もしボクのプログラム……メインサーバが壊れることがあった場合には、その時点で別プログラムを作動するようになっていた」
「別プログラム?」
「そう。それはもうカウントダウンを始めている。元から、そういう作りだったんだよ、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)は」
「どういうことだよ、遠坂ッ!!」
「3時に……東京に潜む全ての血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)が紫堂を襲う。今までの局地限定の数じゃない。
全ての合計数が一斉に」
そう、遠坂は言ったんだ。