ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


櫂はとても綺麗なふわりとした笑みを見せると、あたしから顔を背け、颯爽と居間から出て行った。


不安なのか、寂しさなのか。


動けずに呆然とするあたしに、玲くんは苦笑しながら言った。


「僕が櫂を護るから」


違う。


櫂だけの問題じゃない。

櫂が危険なら、玲くんだって危険じゃないの。


「芹霞~、俺や桜が居るんだって~」


煌が馬鹿明るく笑うから、泣きたい心地を抑えた。


桜ちゃんは目をくりくりさせながら


「芹霞さんも頑張って下さいね」


そして言った。


「またお会いしましょう。

桜は…嘘は言いません」


それは…桜ちゃんを騙して陽斗の元に行った、あたしへの皮肉も含んでいたのだろうけれど。


もしもあたしの声が出ないことが、向こう側のやばい計画に組み込まれているのなら、あたしは抗しようと思う。


あたしは、あたしの大好きな者達を護るのが運命であって、滅ぼす為の道具ではない。


早く声を戻さなきゃ。


負けるものか!!!


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