ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
"いつ目覚めたの?"
「約1年前。氷皇に起こされた」
"それからツルんでいたんだ"
陽斗は嫌そうに顔を向けてくる。
その頃から――
櫂を貶(おとし)める計画は進んでいたのだろうか。
「俺は正直、あいつの元で動くのは死ぬほど嫌だ。……じゃあ何故一緒にいたのかって顔してるな、芹霞ちゃん。ぎゃはははは」
あたしは何度も、ぶんぶんと頷いた。
「男には――…
矜持を犠牲にしても、
護りたいもんがあるんだよ」
護りたい?
紫堂への復讐の為ではなく?
あたしが目を細めると、
陽斗は笑いながらあたしの頭をぐしゃっと撫でた。
その返答を誤魔化すかのように。
「俺が着てるこの服は、制裁者(アリス)の制服だ。これには特殊加工がされていて、纏っている限り、あの水槽の中にいても濡れねえ」
"なんと!!"
「あそこに入っているのは水という液体ではなく、ゼリー状の……母胎の羊水のようなものらしい。防水出来る服の成分が何かは知らねえがよ」
そう言って陽斗は掴んだ服を差し出した。
その服を着て、あの水槽に入れと…いうことらしい。
治る可能性があるのなら、やってみようか。
服を受け取りながら、
あたしはふと陽斗の上半身を見てしまう。
裸だ。
何も食べないくせに、体躯はがっしりしている。
筋肉もついていて、余分な部分はない。
「随分じろじろと……男の裸に見慣れてでもいるのかよ、ぎゃはははは」
あたしはむっとして、金の頭にチョップした。
金色男はぎゃあぎゃあと怒っている。
ふと――。
どうして素人であるあたしの攻撃を、陽斗はモロに受けるんだろう?
そんな疑問が湧いたけれど、それ以上に気になるのは陽斗の身体。
切り傷?
刺し傷?
火傷?
あらゆる種類の…
夥(おびただ)しい傷の痕。
この大きさ、この数。
普通ではありえない。