ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



あたしの視線に気づいたのか、

陽斗は苦々しく笑った。



「俺だって不死身じゃねえんだよ。色んなことされてあらゆる処をいじくり回されりゃ、再生を拒否する傷があったっておかしくないだろうよ」


その傷を作らせたのは、紫堂。

その紫堂を憎んでいる、陽斗。


…………。



あたしはそっと…

その傷に手を伸ばして触れた。


傷痕の分だけ、陽斗は苦しんできたのだろう。



いいように扱われる身体。

拷問を受けても再生する体。


与え続けられる苦痛は無限回廊のように。


痛いのは肉体より――

陽斗の心だったんじゃないか。


そして過去の残像は、

いばらとなって彼の身体を巻きつけている。



今も尚――。



幽かに盛り上がる痕を指の腹でなぞると、陽斗は困惑したような顔であたしの手を払う。



「哀れむな。虫酸が走る」


そう突っぱねる哀しげな金色は孤高に輝いて。


それでも尚も傷痕に手を触れようとしたあたしに、


「……芹霞ちゃんよー」


陽斗があたしの腕を掴んだ。



「俺を惑わせるなよ」


見上げた金色の瞳は、何かが激しく揺れている。


「狂わせるな」


搾り出すような声。


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