ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「本当ならば今頃、お前に惚れてる御階堂にお前を奪わせ、その目の前で俺が紫堂櫂を殺っていた。紫堂櫂にとって最大の屈辱の形でな」
あたしは黙って陽斗を見つめる。
「紫堂と手を組むなんてありえねえ。なのに、お前の存在がそのありえねえ事態に俺を追い込んでいく」
それは本当に悔しそうに。
「初めて会ったあの夜は偶然なんかじゃねえ。
全ては計算されていた。
俺が首を裂いた女の役目は、氷皇が用意したゲームを渡しお前を巻き込むこと。
そして俺の役目は、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の存在を認識させること。
遠坂由香のプログラムの産物を血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)というのなら、あの夜の女は意味が違う。俺が殺すことで生きる屍、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の"擬態"だ。
生ける屍になるタイミングなんて、ゲームだけと限ったわけじゃない。それを研究していたのが8年前。その知識があれば、どうとでも応用出来るらしいさ。
俺は人を殺すということに抵抗はねえ。そこからして俺はもう、人間という枠外の、異形の存在だ」
嘲るような表情とは裏腹に、その金の瞳は切なさに満ちていた。
"先に櫂と会ったのも必然?"
「いや、予定より早く偶然出くわした。血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の狩りの最中にな。
本当はもっと効果的な演出狙ってたんがよ。急遽予定変更で、即殺してえ心抑えて、アバラ外すなど面白味ねえ方法で切り上げた。
とりあえず早くお前巻き込む為、警戒心強いあいつが傍にいない次夜…お前に遭った。不機嫌な御階堂から急かされたしな」
"でもあたしに渡ったものが、そのまま櫂に渡っておしまいの可能性あったでしょう?"
「ああ。だから保険として遠坂由香がお前の友達をひきこんだ」
だから親しくもない弥生に、ゲームを紹介したんだ。