ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


"何でブラッディローズを狩っていたの?"


「遠坂由香のプログラムは限界がある。制御できる血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の数が決まっているんだ。その絶対数の調整が俺の役目。殺すことに躊躇いがない俺には適任だろう」



陽斗が極悪人の顔をするから――

あたしは首を振って否定した。


"躊躇しない人間は、弥生を助けたあの薬を持ち歩かないよ"


「あれはお前を信用させようと……」


"何から何まで悪ぶり、人外の存在だって思い込むのはよくない。少なくとも弥生の家で、陽斗はあたしを拉致ることも出来たのに、弥生も玲くんも助けた上、玲くんを送り届ける時間もくれた。煌とのいざこざも諭してくれた。そんな陽斗を非道な人間とは思わない"


あたしは信じたいんだ。


あたしの知らない処でどんな計画がたてられてても、それでも陽斗は完全に憎悪と復讐に飲み込まれているわけではないと。


以前陽斗は、彼が血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を狩るのは人間を襲わせない為だと言っていた。助かるならば薬で戻そうとしていたと話していた。



実際――。


弥生も玲くんも助けてもらった。



だから、あたしは陽斗を信じる気になった。


たとえ今更、あれは全て演技だったのだと、計算された内の1つだったと言われても、あたしは信じない。


先輩が来た時。

蒼生が来た時。


助けようとしてくれたあの姿は間違いじゃない。


屈辱的な扱いをうけても庇おうとしてくれた、あの瞬間を信じたい。



"陽斗は、人間だよ"


本当に強くそう思うから。


"失ったものが大きいのなら、得るものをこれから多く作っていこう。感情は損得勘定ではないけれど、陽斗の『これから』を応援したい"


陽斗は黙ってあたしの顔と携帯画面を交互に見比べていたが、やがて悲壮な顔を向けて呟いた。



「この先――

俺何もいらねーからよ」



深い翳りに覆われた顔。



「お前が欲しい……」



熱を孕んだ、掠れきった声がした。




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