ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
『聞こえているか!?』
少し怒ったような櫂の声。
受け取ってくれない陽斗。
仲介しているあたしばかりが焦る。
『……いい度胸じゃないか』
突然冷たくなる櫂の声。
横を向いた陽斗の顔に、
あたしは更に電話を突きつける。
『陽斗……お前』
今度は反対側に、ぷいと横を向いてしまう。
『芹霞に手を出したら…
承知しないぞッッッ!!』
ひええええ。
電話の向こうから、絶対零度の櫂の声。
何だか判らないけれど、怒っている。
かなりかなり、怒っていらっしゃる。
あたしはもう涙目で、
土下座して陽斗に携帯を差し出した。
王様に貢ぎ物をする奴隷の気分だ。
「……ちッ」
ようやく陽斗が電話を手に取ってくれた。
「何だよ!!!」
陽斗はあたしを睨み付けながら、ぶっきら棒に返事をすると、あたしから遠く離れて行った。
まるで会話を聞かせたくないように。
それならそれでいい。
怒れる櫂と話して、1人でその怒りを静めてくれるなら。
いや、頼むから1人で静めて欲しい。