ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



どろどろとした液体がまとわりついて、喉が苦しい。


この苦しさは治療だの回復ではない。



――ただの窒息感だ。



やばい。


意識が飛ぶ。


苦しい。




四肢をばたばた暴れさせ、息苦しさにもがいた時、

あたしの唇から空気が流れ込んできた。



うっすらと目を開けたあたしの目の前には、

陽斗の顔のドアップ。



あたしの唇が、陽斗の唇と――



……!!!?



キス?


キス~!!?



思わず手でどんと陽斗の胸板を叩いても、弱まるあたしの力はたいしたダメージにはならないようで。


それどころか次第に息苦しさが消えていくから。

叩くことをやめた。



あたしを抱えた陽斗が、

やがて上昇して水槽から顔を出した時、


「なッ!!!」


あたしは思い切り拳で陽斗の頬を殴ってやった。

ぐーだ、ぐー!!!


 
陽斗は凄く不愉快そうに顔を歪ませたけれど、これで終わっただけでもありがたく思って欲しい。


これは"初ちゅう"じゃない。

これは人工呼吸だ。


うん。そうだ。


「お前な、身長というもん考えれよッ!! ここは水位調整もあるんだし、どうして俺を待てないんだッッ!! 溺れ死にそうなお前を助けて、なんでグー!!?」


陽斗は何だかぎゃあぎゃあ言って、あたしを水槽から出した。


濡れた金髪を掻き揚げる仕草があまりに色っぽく、盗み見して僅かに照れてしまったことは絶対言わないでおこう。


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