ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
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「気狂の血を引く玲を必要とする私は、それ以上の気狂いということ。完璧主義の私の心情らしく、いっそ此処で完璧に狂ってしまいましょうか」



僕は、影の道を自ら選んだ。



櫂の為に。

櫂の為なら。



紫堂を担うのは、櫂しかいない。



僕は、"僕"としての希望を捨て、より一層の諦観と堅忍の術を身に付けた。


元々"僕"は望まれていないから。

紫堂に必要な僕しか必要ないから。


そう、今までの延長上にいるだけだと。



櫂に出来ない"裏の紫堂"を…

だから僕は自ら進んで引き受けた。



太陽の道を歩くのは僕じゃない。

それは選ばれた櫂だけだ。



判っては居るけれど。

烏滸(おこ)がましいけれど。



元老院の前で、気狂いの"僕"と共に堕ちようとした櫂に、僕は凄く感動してしまったんだ。

 


午後1時。


御階堂に放った罠が功を奏する時間。


本来ならば僕が家にて追い込みをかけていたい処だけれど、遠坂由香ちゃんは実に優秀で。


僕の少々荒い……犯罪すれすれの荒業を引き継ぎ、きちんと仕上げてくれるだろう。


彼女には、同時にもう一つの仕事を……血色の薔薇の痣(ブラッデイ・ローズ)を完全に封じるプログラムを、僕の簡易プログラムの補完をして貰わねばならない。



皆で示し合わせた時刻。


予定通り櫂が御階堂を蹴落としにかかる。




ここに呼ばれたのは、主事変更を決定的にするため。

その歪んだ顔を見て愉しむため。


だからそれを覆すために、僕達は企てた。


御皆堂には価値ないと思い知らせる為に。

紫堂の力を認めさせる為に。



だが…元老院側には、まだ何かあるようだ。



篠山亜利栖――

もとい、藤姫が現れた。


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