ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




元より櫂も僕も――

"彼女"の出現は想定内だった。


だけど、それでもその姿を目に入れてしまえば。


僕の身体に怒りが走る。


この女が、芹霞の声を奪ったのか。



僕が居て。


僕の目の前で芹霞の声を奪ったのか。



尋常ではない程の、凶々しい気を放つ存在。

亜利栖との境界が曖昧で、不安定な存在。


優位性があるのは、亜利栖か藤姫か。


姿は…完全に篠山亜利栖のもののようだ。


元老院は何も言わず、

ただ彼女を見ているだけ。


こちらも予定通りの登場なのか。



そこに意図的なものを感じるとすれば、

ここからが本題だ。



櫂にもそれが判っているのだろう。


一気に顔を堅くさせた。



何だ。


僕達を此処に呼んで、一体何をしようとしている?



「御階堂の勢力は減じたとはいえ、それでも慶び事は続いております。それでなくとも御子神祭。生々しい話は後にして、ここではまずお祝いいたしましょう」


僕が目を細める中で、巫女服を着た少女が、部屋に大きなテレビを運んだ。


カラカラとキャスターの音が鳴り響く。



何だ、この…場に似つかわしくない機械(テレビ)は。



電源が入れられる。



ざわめいたどこかの会場が画面に映った。


見覚えあるこの雰囲気は――ロイヤルホテル?

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