ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



何かを話す男の顔が大きくなる。



「御階堂!!?」


櫂の呟き。


くすくすとした亜利栖の声。



『……僕の婚約者たる、神崎芹霞さんです』



どくん、僕の心臓が波打った。



何を――

言っている?



テレビの声は僕には届かなかった。


聞こえているけど、理解が出来ない。



そして画面一杯に現れたのは――



「芹霞ッ!!?」



煌が声を荒げて、テレビに駆け寄った。



芹霞が居る。


美しく着飾った芹霞が。



『緊張で声が出ないようですが』



違うだろう!!?



芹霞は嫌がっているじゃないか。

何度も声を上げて!!!




…ああそうか。

そうなのか。



こんなことの為に――



亜利栖がぱちんとテレビの電源を切った。


愉快そうな元老院のざわめきが響く。



こんなことだけの為に――



「芹霞の声を奪ったのか、藤姫」



僕の中から――

恐ろしいほど低い声が出た。

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