ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
規制が及ばない素人の妄想程、恐ろしいものはない。
それ以上に恐ろしいのは、その情報収集力。
現実の美形男子そのままに、癖や生活サイクル全てが本物とは。
そのリアルさが恋する乙女達の心に更なる火をつけ、限りなく現実的な擬似錯覚を起こすのだそうだ。
判るような、判らないような……。
また、リアルに即した"キーワード"がゲーム進行には不可欠で、それがなければ進行が滞ってしまったりと…中々に簡単に進ませては貰えぬ、もどかしい作りになっているらしい。
そんな中、不定期に送られるメルマガには、"キーワード"が判らなくて、ゲームが進めなくなってしまった少女達の救済として、期間限定で…キーワードなくとも物語が進めることが出来る…その告知らしい。
「ねえ、最近なんで芹霞が、女達に執拗に追い掛け回されるかわかる?」
「へ?」
「芹霞だけが追い掛け回される理由、教えてあげようか」
男を騙す小悪魔の笑み。
こういう表情をする弥生は、ろくなことがない。
そしてそういうことに対して働く、あたしの直感もろくなことがない。
だから昨日も、東京イケMENSメンバーを聞きもしなかったんだ。
「ふふふ、勿論。出てるわよ、紫堂くん。残念ながら如月くんは外れちゃってるけれど」
やっぱり。
「リアで相手にされなければ、超現実的なゲームで一心に想われたいのがオトメゴコロ。想われる為には、どうしてもリアに忠実な"キーワード"が必要。それを紫堂くんが教えてくれるはずもないし、如月くんから聞くのも絶望的。そんな…紫堂くんの個人情報が漏れてくるはずもないしね。だからてっとり早く、芹霞が狙われてたわけ。いやいや、ご苦労様」
だから…楽しそうに見てたんだ、弥生は。
「なんちゅーもんを、あたしにやらせようとしてたのよ、弥生」
軽く睨めば。
「そりゃあ? あの美貌に麻痺して、"幼馴染"以上をぬけきれないあんた…違うか、"紫堂くん達"を見かねて。
いつまでたっても"幼馴染"の紫堂くんを、攻略対象にして擬似恋愛でもまず味わうことこそ、あんたの第一歩。このゲームの意義があるんだからね?」
にやりと笑う、弥生の真意がわからない。