ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「神崎から離れろ!!!!」
乱入したのは御階堂充だ。
憤然とした御階堂が、陽斗に手をかけた。
もう…先輩なんて思うものか!!!
こいつは呼び捨てレベルだ!!!
「うるせえよ。お前との契約は破棄っつったろ」
陽斗はあたしを離そうとしないで、顔だけ御階堂に向けたようだ。
「俺は機嫌悪いんだ。
……殺るか?」
一瞬にして、場は殺気立つ。
突然トーンが下がった声音に、あたしは慌てて陽斗から身体を離すと、駄目だとぶんぶん頭を横に振った。
煌もそうだけれど、何故簡単に人を殺すなどと言えるのか。
本当に実行しようとするのか。
人として、それはしては駄目だ。
そう人として。
そんなあたしに向けられた御階堂の言葉は、
「そうだ。神崎は、僕の女だ」
実に満足そうな声音で。
あたしが陽斗から、彼を庇ったように思ったのだと気づいたら…あたしの心は、心底冷え切った。
こんな…状況判断も出来ないような自分勝手な男を、少しでも信じようとした自分の愚かさが身に染みて、何で早々に見限らなかったのかと更に深く後悔した。
何で陽斗の忠告を突っぱねてしまったのか。
この男は最低だ。
誠意を利用し、上辺の力で人を縛れば、心までも屈服出来ると思っている勘違い男。
誰がこんな男に一生を捧げるか。
こういう輩が一番許せない。
あたしを懐柔出来るものならしてみろ。
生憎あたしは、黙って従うような殊勝な精神は持ち合わせていない。
その意思を読み取ったらしい御階堂は、突然顔を横にそらした。
「言ったんだろうが、お前が。
強くなって欲しいものを手に入れろ、と」
そんなこと言った覚えはない。
「だから僕は――」
この男、あたしを誰かと間違えているんだろうか?
勘違いも甚だしい。
「覚えてないのかよ、
――…1年前」
また、御階堂は言った。
1年前と。