ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「桐夏で……

お前、僕を助けただろう?」


は!?


「他校の不良に暴行されていた僕を、通りかかったお前が助けてくれただろう?」


そんな記憶なんて――


…………。

…………。


…………?

…………!?



…………。



うっすらとあるかも知れない。




あれは――

高校入学したての頃。


まだ慣れぬ渋谷校舎で、櫂と煌との待ち合わせ場所に行き着かなくて、色々彷徨(さまよ)って途方に暮れていた時。


聞こえた物音と見えた人影に、これ幸いと道を尋ねようとしたあたしは…偶然、集団リンチの現場に居合わせてしまった。

無論、尋ねられるような、和やかな雰囲気ではない。


殴る蹴るの暴行をうけて蹲(うずくま)る男子生徒。


昔の櫂の姿を重ねて見てしまったあたしは、気づいたら、その不良に掴みかかり…今思えばよく無事だったとは思うけれど、完全怒り任せで不良達を頭突きで制覇していったようで。


気がついたらその男子生徒しか居なくて。


弱々しく、消え入りそうな――


………。


「思い出したか?」


あたしの視界は、ぐらり、と揺れた。


櫂程ではないけれど、櫂のように変貌を遂げた人間が、他にも居るとは。



ああ――

あの時の震えるばかりの弱々しい男子生徒が、この不遜の御階堂なのか。


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