ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「養子として馴染まない御階堂を利用して、俺は力を手に入れた。

あの時――1年前のあの時から、お前が欲しいと思ったから」


思い出してくる。


目の前の男子生徒は、声をかけても、"うじうじ"、"ぐじぐじ"、"びくびく"
…それはそれは、人を苛々させる態度で。


助けたのに、ありがとうもいえない弱い男で。

正直、助けたことを後悔しかけたくらいで。


暴行を受けたのは、彼自身のそんな態度にも問題があるのだと、初対面なのに説教をしたんだっけ。


――強くなって、本当に欲しいものを手に入れなさい!!!


どんなに弱くても、意思1つで強くなることが出来るから。


願いを込めて言った台詞。


あの時の男子生徒が――

まさか、1つ上の先輩だったなんて。



「お前を手に入れる。

見てみろよ、もうお前は僕のものだと放映されている」


無言で睨みつけている陽斗など気にもしていないようで、無理矢理あたしを立たせて腕を掴み、引き摺るようにして隣の部屋に赴くと、壁に掛かっている大きな液晶テレビの電源をつけた。


テレビのニュースのテロップ。


"御階堂当主が緊急婚約発表"


こんな私的すぎるどうでもいいようなことが、さも世界の大ニュースかのように、大仰に流されるのは…きっと御階堂の裏工作だ。


繰り返し繰り返し、これが流されるのだろうか。



ざわめき。

人の声。



ああ、先刻まであたしが居た会場であることは間違いなく。


見たくない。

嫌だ。


顔を背けたあたしだったが、御階堂にねじ戻される。



「見ろ。これが…現実だ」




『神崎芹霞さんです』



その声と共に、フラッシュがたかれ、

そしてアップになる紅いドレスを着た女性。



女性――



「……なッッ!!?」



女性――?



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