ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
…………。
あたしが今着ているのと同じドレスを着ているその人は、
口の周りに青い髭の剃り跡残し。
くりくり輝くお目々の真上には、何て素敵なげじげじ豪眉。
肌を露わにしたマッチョの腕には、ぼうぼうと……そして黒々と鬱蒼として生える無駄毛がこんもり。
そしてくねくね身体をくねらすその様は、
どこをどうみても、
怪しい女装男――。
「ぎゃははははは」
陽斗の馬鹿笑いが即裂した。
あたしも、声なくして爆笑した。
厳密に言えば、"カスカス"してたけれど。
不思議なくらい声を出さない婚約者を、"照れ"だとか"緊張"だとか"はにかむ"だとか、あくまで女性らしさを強調させる言葉でフォローする、御階堂のその必死さが、滑稽さに更に輪をかけて。
そんな御階堂と、彼が愛しそうに腰に手を回した、"神崎芹霞"という名の彼女――彼とが寄り添う姿は、どう見ても怪しすぎるカップルで。
いやいや、御階堂にその気があるのなら、それはもう、皆に祝福された薔薇色会見だったのだろうけれど。
いやだ、何これ。
これが全国区で流れているの?
全国にどれ程"神崎芹霞"という名前の子がいるのか判らないけれど、自分と同じ名前で此処までされたら、もうギャグ漫画の主役になったとしか思えない。
幸せも妬みも…怒りすら。
何1つ生まれては来ない。
あるとすれば…同姓同名の怪しげな男を、婚約者としてこんに大々的に宣伝した…御階堂への哀れみだろうか。