ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「負けだね」
笑いの流れで蒼生が言ったから、誰に向けられた言葉か判らなかった。
「完全に君の負けだよ、みっちゃん」
蒼生は御階堂を見ていた。
酷薄そうな笑みを浮かべて。
「幾ら気高き獅子を真似しても、所詮は真似事。本物である彼には敵わない。彼の仲間にも敵わない。君が集めた仲間――力で脅した陽チャンや由香チャンは、今や紫堂の仲間だ。君が何かをやればやる程――気高き獅子と君との差をみせつけられるばかりだ」
「ち、違うッッ。これからだッッ!!!」
「その言葉を何度聞いたかな、俺。君が御階堂の力によって手に入れたものは、紫堂の力によってそれ以上のものを奪われた。
何度も電話で報告が来ていたはずだ。御階堂グループの勢力は、今や紫堂の手の中。気高き獅子が少し本気で動いただけで、たった数日で御階堂は陥落する。
それだけの器だったんだよ、君は」
容赦ない、蒼生の言葉。
あたしは御階堂が嫌いだ。
「気高き獅子の足下にも及ばない」
だけど――
「君は醜態を曝しすぎた。
そんな君を元老院が許すわけないだろう?」
これではあまりに――
「誰もが判っていたことさ。君にも判っていただろう? 君はただの傀儡と。君に出来るのは、せいぜい高校の生徒会くらいなものだよ、あはははは」
彼が哀れだ。
「ちょっとお話ししようよ。
その椅子にお座り、芹霞チャン。陽チャンもさ」
有無を言わせない藍色の瞳。
あたし達は従う事しか出来なくて。
あたしと陽斗は、蒼生の真向かい側に隣り合わせで座る。
御階堂は――
床に崩れ落ちたような姿勢で、放心していた。
「その前に――」
蒼生はあたしの前でパチンと指を鳴らし、
「はい。もう声を出していいよ」
そう言ったんだ。