ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


突然何を言われたのか理解出来なかったあたしは、


「どういうこと?」


久々の自分の声に吃驚した。


驚いたのは陽斗も同じだったらしく。


「……ちッ。盲点だよ、アンタ」


やがて忌々しげにそう吐いた。


「やっぱり甘いねえ、陽チャン。でも時間の問題だったんじゃない? 陽チャン回復装置に連れていったんだし。あれに3時間も浸かっていれば、完全に声は戻っていたと思うけど?

俺に言ってくれれば一瞬で何とかしたのに。

勿論条件付きでね。あははははは~」


「……これ以上、条件出すなよ」


「あはははは。随分と俺が無理強いさせているみたいじゃないか。心外だねえ、あはははは~」


あたしはその会話の真意が全然見えない。


「陽斗、何?」


隣の陽斗の腕をわさわさ揺らした。


「こいつは……

制裁者(アリス)の責任者だった」



だったら何だというのだろう。


大体制裁者(アリス)のこと、あたしよく知らないし。


だけど、何だか予感がするから。


話が続く前に、あたしは言った。


「あ、あのさ。何かあたしもジュース貰っていい?」


蒼生の後ろにある冷蔵庫を指差す。


本当は喉なんか渇いて居ないけれど、フェミニスト気取りの蒼生なら、


「取ってあげるよ、どれ~?」


そう言って席を立って背中を向けるだろうから。


あたしは手元の携帯電話の着信履歴、最新の記録で表示されている櫂の携帯に通話したんだ。


櫂ならきっとすぐ出る。


『……も』


案の定、すぐ電話に出た櫂の第一声をかき消すように、


「あ、あたし、オレンジジュースッ!!」


そう叫んで、必要以上に騒いだ。


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