ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
一息ついてからあたしは言った。
「それで。蒼生ちゃんが制裁者(アリス)の責任者なら、どうしてあたしの声が戻せるわけ?」
「君は制裁者(アリス)をどう見てる?」
逆に質問されてしまった。
「元老院の殺戮集団……だっけ?」
あたしは隣の陽斗を見た。
「うーん、それは表向き」
「じゃあ本当の処は?」
蒼生はにやり、と笑った。
「ある処にお姫様がいました」
突然妙な物語口調になった。
何だ?
「お姫様は美しく聡明で誰からも愛されました。そんなお姫様を所望したある組織は、権威の力を振りかざし、彼女を次々に凌辱してしまいました」
何を、言っているのだろう。
「お姫様は『自分』を保つために、壊れてしまいました。いや、自らの真性に目覚めたと言っていいのかな。
残虐なことを好むようになってしまいました」
陽斗には意味が通じているらしい。
じっと蒼生を見ている。
「血を見ることに快感を覚えるお姫様。彼女を悦ばすために、その組織は彼女に玩具を与えました。お姫様のためだけに存在する、決して壊れない玩具」
ぎりっという、陽斗の歯軋りの音。
「玩具を頑丈にするために、特殊な素材が集められました。弱い素材は廃棄され、耐久性があるものだけが残りました。そして量産される玩具が、思惑通りに殺戮の限りをつくせば、お姫様は手を叩いて悦びます。
ただし、その頑強さは完璧じゃなかった。
彼女は完璧を望みました。そしてお姫様を愛する組織は、死なない身体を研究するようになります。医学、科学、隠秘学。
すべてはお姫様のために」
蒼生は愉快そうに、睨み付ける陽斗を眺めている。