ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

悪趣味。


そんなレベルじゃない。


「どうして笑っていられるの?」


あたしは震える声で蒼生に言った。



怒りが――


「陽斗が食べられないのも、眠れないのも。そして傷だらけの身体も。どんなに痛みつけられていたのか、どんなに苦しんでいたのか、蒼生は知っていたんでしょう? どうして、助けなかったのよッッ!!」


込み上げてくるんだ。

あたしの中で。


「あんたはその責任者だったんでしょう!!? しかも五皇だとかいう、高い地位に居るんでしょう!!? 止める力があるのに、どうしてただ笑っているだけなのよッッッ!!!」


陽斗より激高して、

陽斗より憤慨して。


それでもあたしは陽斗を代弁出来ない。

そのもどかしさに、悔し涙が出て来てしまった。


――俺には、救いがなかったから。

――ずっと…1人だったから


煌に向けられたあの言葉が、あたしの頭の中で反響する。


陽斗は、どんなに救いを求めていただろう。

もしも、この男が救っていてくれたのなら。


陽斗には、もっと違った人生があったはずなんだ。


それなのに。

それなのに!!!


「おい…いいから…」


陽斗が困ったような声を出すけれど、あたしの涙と怒りは止まらない。



「何で止めなかったのよッッッ!!!」


もうそれは悲鳴のように。


蒼生は愉快そうに腕を組み、足を組み、ふんぞり返ったようにあたしを見る。



そして――



「どうして…

止めないといけないのさ?」



信じられない言葉を吐いたんだ。



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