ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

「メインは違うけどね」


煌の声が届いていたらしい。

青い光の向こう側で光る、意味ありげな玲の瞳。



「……僕に電波で喧嘩を売ったこと、後悔するがいいさ」



ああ、

残虐な笑みが浮かんでいる。


芹霞の映像を潰しているのか。


山手線の結界を張って、全国区の放映を潰して。


それでまだ、笑う余裕か。


紫堂の次期当主が、本当に俺で良いのか…迷う時がある。


元々その地位に選ばれていたのは玲だ。


少なくとも周囲は、

次期当主に相応しいと玲を認めていたんだ。


それだけの技量は玲にはある。


だけど――

紫堂を担うのは、俺でなければいけない理由があるから。


だから俺は、相応しい次期当主になるしかない。


紫堂の利を第一に考え、駆け引きを続ける。


玲が進んで、俺が動けぬ"裏"を引き受けるなら…、俺は…玲が動けぬ"表"で、強引に動かねばならない。


俺と玲は表裏一体だ。


俺は携帯を取り出して、次期当主として本家に指示を出す。


間もなく――

紫堂財閥の力が救援に駆けつけるだろう。


本音と打算が入り交じった処置。


紫堂を高める機会は転がっている。


そう、考えねばならないのが次期当主。


望んだのは――俺だ。



その時、俺の携帯が鳴った。


芹霞の携帯番号からの着信。


もしかして陽斗か?


また芹霞にちょっかいかけているのかと思えば気分は悪いが、芹霞の声の回復を頼んだのは俺だ。


だから芹霞の為に、電話を出た。



「も……」


しもし、と続けようとした俺の耳に飛び込んできたのは、


『あ、あたし、オレンジジュースッ!!』


芹霞の声だった。


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