ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「……うるせえよっ!!」



煌の野性的な顔が歪められ、

あたしは煌に強く腕を取られた。


「!!!?」


途端覆われるのは煌の温もり。


燃えるように熱い肌と、乱れた吐息。


あたしを抱きしめる両腕は、息が出来ないほど強いもので。


煌の汗ばんだ匂いに――

世界がくらくら揺れた。



「こ、煌!?」



以前のぎゅうには感じ得ない、

その攻撃的な熱さにあたしは怖くなった。


今まで感じたことのない、得体の知れない恐怖。


そして――

幼馴染みの煌が、煌で無くなってしまうような、危機感。


警鐘のように早く鳴り響く心臓が痛いくらいで。

泣きたくなるくらいに苦しくて。


そんなあたしを引き戻したのは、



「この――

――ボケがッ!!!」



桜ちゃん。



桜ちゃんの右肘が、煌の背中にクリーンヒット。


呻いて仰け反った煌を、桜ちゃんは腕を煌の喉に巻き付けて後方に引き摺り、くいと捻ったようだ。


煌は桜ちゃんを突き飛ばし、

四つん這いになってげほげほと咳を繰り返す。



そして――


「な、皆――

どうしたんだ?」



とても不可思議な顔をしたんだ。
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