ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「どうって……
お前覚えていないのか?」
玲くんが固い顔をして煌に訊いた。
「あ!? これから元老院の処に向かうんだろ? 何こんな処で突っ立ってんだよ。お前の結界だって有限だろうが。早くあの女の処に行こうぜ?」
何もなかったかのように煌は立ち上がり、皆を促した。
「芹霞、お前何尻餅ついてるよ? 血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の大群見てびびったか? 今更?」
そう、からからと笑い始めた。
あたしはもう煌に絶句するしかなく。
口を開けたまま座り込むあたしに、桜ちゃんは唇を噛みしめながらあたしに手を差し伸べた。
あたしは溜息をつきながらその手を取り立ち上がると、腕を組んで深刻そうに考え込む櫂と玲くんの姿を捉える。
気持ちはよく判る。
だって――
不自然過ぎるから。
何か判らないけれど、上機嫌の煌は偃月刀を振り回して、広範囲の血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を倒している。
今までぼんやりとしていた癖に、
えらく威勢がいい。
しかも――動きがいい。
三人の後ろ手だった煌が、前線で大いに活躍している。
この張り切り様は、何?
意味不明。
異常だと思いながらも、それでも先刻よりも明らかに煌らしい煌。
一体何が起きているのか。
しかし煌から返るのは――
「はあ!?」
面妖だという態度で。
そんな質問を寄越す方がおかしいとでも言いたげに。
だからあたし達は、それ以上を解明できず…ただ黙々と四谷に向かう。
向わざるを得なかったんだ。