ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
涙が零れた。
――殺す気かよ。
櫂に拒まれたあたしは…
何処に行けばいいのだろう。
以前のように、一緒には居られない。
櫂の隣に立つことは出来ない。
隣に――。
ああ…。
今までは普通であり得たその事も、
櫂が拒むのであれば何と身分不相応で浅ましいものか。
幼馴染みの"永遠"がないのなら。
あたしは櫂が拒む"他人"の1人で。
そう。
いつか終焉を迎える儚い間柄。
あたしの存在理由は――
なくなってしまった。
「――っ!!!」
嵐のように荒れ狂う心の内の感情を、あたしは知らない。
ただ酷く切なく、
酷く苦しく。
懇願にも似た、悔いにも似た感情。
離れないで。
あたしを置いていかないで。
あたしと一緒に居て。
8年前の、あたしを追いかけて泣き叫ぶあの櫂に、今のあたしがぴったりと重なる。
あたしの目から流れる涙が止まらない。
「櫂――ッッ!!」
――芹霞ちゃあああん!!
「本当に大丈夫なんだろうな!?」
その時。
ドアが開いて、耳慣れた怒声がしたかと思うと…足音がした。
こちらに近づいてくる複数の靴音。
仕切りカーテンが乱暴に開かれた。
飛び込んできたのは――