ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




「芹霞!!!」



玲くんの端麗な顔。


玲くんだ!!!

玲くんが居た!!!


その安心もあってか、またぼろぼろと涙が零れる。

 
様々な感情を乗せた涙は、止まらない。


 
「芹霞、どうしたの!!?」



溜まらないといった顔で、

玲くんはあたしを抱きしめた。


「どうして泣いているの!!?


何かされた!!?」


噎せ返りそうな玲くんの匂いに少し怯みながら、あたしは窒息寸前で手足をばたつかせると、ようやく玲くんもそれに気づいたようで、ごめんと身体を離す。


おかげで涙はすぐひっこんだようで、後に残るのはきっと――あたしの赤い目と、ぐちゃぐちゃになった顔。


玲くんは長くて白い指であたしの目尻を拭い、あたしの顔を覗き込んだ。


玲くんの顔には笑みはなく、強ばっているようにも思えた。


「どうした? 何があった?」


あたしは櫂のことを言いかけて、目を反らした。


「何でもない。

……本当に何でもないの」



櫂と一緒に居れなくなったら…

玲くんとも一緒に居れなくなるんだろうか。


そんな不安が押し寄せる。


ずっと玲くんとも、一緒に居ると思ってた。


何処までも、ぬくぬくとした温かい安らぎをくれる玲くん。


器用で何でも出来るし、強くて、優しくて、綺麗で、頭も良くて。


もし櫂に――…

どちらを永遠に傍に置きたいかと尋ねたら、櫂は玲くんを選ぶだろう。


あたしじゃない。


選ぶのは絶対――

玲くんだ。


それは嫉妬にも似た、

一方的な黒い感情で。


何も悪くない玲くんの顔が見れずに、あたしは唇を噛む。


「芹霞?」


玲くんの戸惑った声が聞こえてくる。


ごめんね、玲くん。


あたし今…

玲くんの顔が見れない。



「原因は――櫂?」



その低い声は――

場の緊張を一気に高めた。

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