ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「もういいでしょう? 貴方一人で全てを抱え込まなくても。俺達は貴方に護られて成長してきた。貴方が覚悟を決めた今――
少なくとも、貴方の力の一部として、共に前に進めるはずだ」
その言葉に、紅皇は哀しげで、そして満足げな笑みを浮かべた。
「まだまだ子供だと思っていたが、嬉しい誤算だな、坊」
そして天井を仰いで、静かに語り出した。
「元より元老院は――日本の未来を憂えて作られた、裏の政治組織だったと聞く。権力を振りかざすでもなく、財力で抑えつけるでもなく、ただ強い思想をもった血気盛んな若者が集う組織だったという。歴史が変えた有名志士は、皆この組織にいたらしい。秘密結社みたいなものだ。
それが腐敗したのは、明治維新直後。ある男が元老院に娘を差し出した。所謂人身御供という奴だ。凌辱された彼女に、元老院が支配されていった。当初からの男の思惑通り」
それは氷皇が電話越しで言っていた。
「でもそれは。元老院の行為で彼女が狂って」
すると紅皇は、意味ありげに笑った。
「坊。藤姫は元より正気だ。いや……元より狂っているといえばいいのか。何よりその娘が藤姫だとすれば、藤姫は現在何歳になっている?」
俺は間違いに気づく。
明治維新直後の話だったはずだ。
「藤姫が100歳以上のはずがない」
そう、俺が昔見た限りにおいては、少女のような若さがあった。
顔の輪郭は朧気な記憶ながらも、これだけははっきり言える。
年寄りではなかった。
今の俺と同年代か、それ以下のような風貌で。
「ところが――
それが藤姫だ」
紅皇が、艶然と笑った。