ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「私が家に帰った時――
制裁者(アリス)の手が…
芹霞の胸を貫いていた」
――芹霞ちゃんを助けてえええ!!
泣き叫んで紅皇に縋る少年。
――芹霞、おいしっかりしろ!
敵を蹴散らし、少女を揺すぶる紅皇。
「芹霞を助けるには、方法は1つしかなかった。
それは紫堂の力を……闇を司る坊の血染め石の力で、芹霞に仮の命を与えること。
他人の命を支配できる闇石。それに賭けてみるしかなかった。それを司る運命に坊が生まれたのは、必然だったのかもしれん。
ただ当時の坊の力量では石を操るのが難しかった。
殆ど不可能に近い程に。
私が石を操ろうとも、私の力でさえ操作は困難だ。私が出来るのはせいぜい、石に力を注ぎこむことくらいだ。
そこで私は考えた。操るのは徐々でいい。それまでは……力を注ぐくらいなら、私が何とかしよう。だがそのままでは、芹霞の身体は"生きて"いるが、決して目覚めぬ。私の力が枯れた時、芹霞は目覚めることなく命を落すだろう。
どうしても坊が強くなる必要があった。更に。坊が操れるまで、私の力を補強させる紫堂の力も必要だった」
「ご当主……ですか?」
桜が聞くと、緋狭姉は頷いた。