ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
かつての紅皇として闘う、現役の緋狭姉の姿が心に流れる。
緋狭姉、修羅場潜りすぎ!!
うわあ、そんなことまでやってのけたのかよ!!
おいおい、そんな芸当、反則技だってば!!
…なんて、ずっと残像を眺めている時間はなく、俺がすぐに想起した炎の形は、現役時代の緋狭姉と共に居た鳥の姿。
「――金翅鳥(ガルーダ)!!」
途端、腕環から発せられた炎は膨れあがり、両翼を広げた鷲のような姿をとると、凄まじい速度で頭上を旋回した。
翼の羽ばたきで舞い落ちる炎に辺りは瞬時に赤く燃上し、俺が敵と見なす人間と非人間の集団は、忽ち灼熱の炎に焼かれて煤となる。
すげえ……。
緋狭姉、こんなこと出来たのかよ。
今、俺はあくまで緋狭姉の力を借りているだけであって、俺の力ではない。
超えるまでいかなくても、いつかは実力で並びてえ。
緋狭姉は、俺の理想だ。
炎と風が入れ乱れる空間は、苦しいくらいに熱気で覆われた。
幾ばくかの息苦しさに目を細めた時、櫂が動きを止めて考え込み始めた。
「どうした、櫂?」
「……ここの地下……何が?」
地下?
俺は意識を飛ばしてみる。
「……出来るなら関わり合いたくねえ程の、悍しい気を…瘴気を感じるな」
はっきりとした輪郭はみえないが、どろどろと汚濁した想念。
櫂は眉間に皺を寄せると、くるりと反対側に方向転換をし、その地下へと続く階段に向かって歩き出す。
「おい、櫂?」
何も答えず、すたすた突き進む櫂を置いて芹霞の元へいく訳にもいかず、俺は櫂の後をついて地下に赴いた。